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ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドの評価は?分配金の仕組みと注意点を解説

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ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドをご存知ですか?

ファンドの名前が表すように「インカム(配当収入)」を重視して銘柄選択を行うアクティブ型の投資信託で、その安定した収入が人気のポイントになっています。

 

ですが、この配当(投資信託の場合は「分配金」)という仕組みには、必ず知っておかなければならない注意点があります。

 

この記事は、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドの「毎月分配型」に絞って、ファンドの仕組みや実績、他ファンドとのパフォーマンス比較、口コミや評判、メリット・デメリットを紹介しています。

毎月分配型に興味があり、そのジャンルの投資信託を探している人は必ず知っておかなければいけないポイントをまとめているのでぜひ最後まで目を通してみてください。

この記事のまとめ

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)は、安定的な配当収入(インカム)が期待できる反面、成長があまり期待できない「公益企業」が投資対象。

そのため、

  • 毎月分配金は受け取れるメリットはある
  • 一方で、ファンドの純資産総額が増えにくい

直近5年間のパフォーマンスは、

  • 先進国株式や全世界株式を投資対象とするインデックスファンドに大きく劣後
  • リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)などで株式市場全体が急落した場合の基準価額の回復が期待しづらい

口コミを見ると、保有している人の年齢層は比較的高く、現在保有している人の評判は悪くないが、長期・積立で資産形成を考えている若い方には、不向きなファンドとも言える。

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の概要

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「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」の商品区分、属性区分とファンドの費用は以下のとおりです。

商品分類

  • 単位型・追加型:追加型
  • 投資対象地域:内外
  • 投資対象資産(収益の源泉):株式

属性区分

  • 投資対象資産:その他資産【投資信託証券(株式)】
  • 決算頻度:年12回、毎月10日(休日の場合は翌営業日)
  • 投資対象地域:グローバル(日本を含む)
  • 投資形態:ファンド・オブ・ファンズ*
  • 為替ヘッジ:なし

ファンドの費用

  • 購入時手数料 :販売会社により異なる(上限3.85%)
  • 信託財産留保額:なし
  • 信託報酬など:最大年率1.81%程度

出典:投資信託説明書(交付目論見書)2023.11.11|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

信託報酬などの内訳は、信託報酬年1.21%、投資先ファンドの費用0.6%程度で、投資信託協会が発表している「投資信託の主要統計」にある、アクティブ型投資信託の平均購入時手数料2.13%、信託報酬1.12%に比べると、ピクテグローバルは運用コストは割高な水準と言えます。

また、ファンド・オブ・ファンズは、他の投資信託に投資を行う運用方式で、投資先のファンドでも手数料が発生するため、ピクテグローバルのコストはインデックスファンドなどと比べるとかなり割高になっています。

 

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の特色

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)(以下:ピクテグローバル)の特色は以下の4つです。

  1. 主に世界の高配当利回りの公益株に投資
  2. 特定の銘柄や国に集中せず、分散投資
  3. 毎月決算を行い、収益分配方針に基づき分配を行う
  4. 為替ヘッジを行わない

 

1. 主に世界の高配当利回りの公益株に投資

ピクテグローバルが挙げている公益企業(公益株)とは、電力、ガス、水道、電話・通信、運輸、廃棄物処理、石油供給などの企業のことで、景気の好不況に関わらず、配当で安定した収益が期待できる銘柄です。

景気に左右されにくい安定感はありますが、逆に大きな値上がりは期待しづらい銘柄だとも言えます。

 

ピクテグローバルは「グローバル・ユーティリティーズ・エクイティ・ファンド」というファンドを通じて公共株への投資を行っています。

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出典:投資信託説明書(交付目論見書)2023.11.11|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

上図では「グローバル・ユーティリティーズ・エクイティ・ファンド」以外に「ショートタームMMF EUR」に投資をしていますが、資産別構成を見ると公共株に投資をする「グローバル・ユーティリティーズ・エクイティ・ファンド」がほぼ100%となっています。

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出典:月次レポート(2023年11月30日現在)|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

2. 特定の銘柄や業種、国に集中せずに分散投資

ピクテグローバルは、地域や業種、銘柄を分散することで価格変動リスクなどの低減を図っ

います。月次レポート(2023年11月30日現在)の地域や業種、銘柄ごとに分散状況をみると、地域(国別)の組入国数は12ヶ国で米国の比率が70.5%です。過去の運用報告書を見ても米国が60%後半から70%前半の比率で推移しています。

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出典:月次レポート(2023年11月30日現在)|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

業種別では、電力43.2%、総合公益事業37.4%と上位2つの業種で約81.0%を占めています。

総合公益事業に分類される企業は、電気・ガスの両方を行っている企業です。業種別ではエネルギー系の公益事業の比率が高くなっています。

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出典:月次レポート(2023年11月30日現在)|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

投資している銘柄は50銘柄(203年11月30日現在)です。組入上位10銘柄の合計構成比は44.5%になり、銘柄に関しては構成比が極端に高い銘柄はありません。また、公共株のため日頃ニュースなどで目にする銘柄がないのもピクテグローバルの特色です。

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出典:月次レポート(2023年11月30日現在)|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

特色には「特定の銘柄や業種、国に集中せずに分散投資」となっていますが、構成比をみると米国エネルギー系の公益企業の影響が大きいファンドと言えます。

 

3. 毎月決算を行い、収益分配方針に基づき分配を行う

ピクテグローバルは、毎月決算し分配金を支払います。また、収益分配方針では、基準価額が10,000円上回る場合は、年4回(3月、6月、9月、12月)にボーナス分配ができる仕組みになっています。

 

4. 為替ヘッジを行わない

ピクテグローバルは運用に際して為替ヘッジを行いませんので、為替変動の影響で基準価額が変動します。上記の国別構成比からもわかるように米ドルの影響を強く受けます。

 

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の実績

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の純資産総額は9,711億円(2023年11月末)と毎月分配型(株式への投資)では3番目に時価総額の大きいファンドです。

1位は「アライアンス・バーンスタインAB・米国成長株投信Dコース毎月決算型(H無) 予想分配金」:2兆1,335億円
2位は「インベスコ 世界厳選株式(H無)毎月決算型」:9,929億円

ピクテグローバルの設定来の実績を設定来の推移で見ていいきましょう。以下のグラフが設定来(2005年2月28日)の基準価額と純資産総額、分配金累計の推移です。

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出典: 月次レポート 2023年11月30日現在|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

2005年2月末の運用開始から2008年8月のリーマンショック前までは、基準価額が10,000円を超えて堅調に上昇しました。毎月分配型の人気も高く、年4回ボーナス分配を行うピクテグローバルは、短期間で純資産総額を約2.8兆円まで拡大します。

この間の分配金の金額は、通常月が30円(1万口当たり)と抑えられていますが、ボーナス月を見ると、

2006年

  • 3月:400円
  • 6月:200円
  • 9月:600円
  • 12月:700円

2007年

  • 3月:400円
  • 6月:600円
  • 9月:150円
  • 12月:400円

通常月の3倍~23倍の分配金を支払っています。
※ボーナス分配は、2008年6月の350円が最後となっています。

 

基準価額は、リーマンショック前に13,000円台を付けて以降、値上がり値下がりはありますが、長期的には右肩下がりで、直近(2023年11月末)では、2,562円とピーク時の5分の1の水準になっています。

ただし、分配金再投資後の基準価額は27,000円を超えていますので、設定来で見ると、トータルリターン(基準価額の値上がり益+受取分配金)では大きくプラスになっています。

 

純資産総額の推移を見ると、ビークの約2.7兆円からは大幅減少して、現在(2023年11月末)は、9,711億と3分の1弱に減少しています。

しかし、基準価額の値下がり5分の1よりも減少幅が抑えられている=極端に解約されているわけではないと考えると、根強いファンがいるファンドなのでしょう。

むしろ、純資産総額は「基準価額×受益権総口数」で計算するで、ピクテグローバルを購入する投資家の数は増えていると考えられます。

 

最後に分配金実績についてみていきます。下表はボーナス分配を行われない時期(基準価額が10,000円を下回る時期)の実績です。

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出典: 月次レポート 2023年11月30日現在|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

基準価額の上昇下降に応じて分配金が変動していることがわかります。

最新の分配金利回りは約9.37%(240円(20円×12カ月)÷2,562円)です。

 

この時点での組入銘柄の予想平均配当利回り3.8%なので、分配金利回りはかなり高い水準になっています。

分配金の原資は利子・配当等収益と売買益(評価益含む)なので、売却益から分配金原資の約6割を出している計算になります。

つまり、実際に投資・運用している公益株の配当だけでは足りず、純資産を大きく削って分配金を出している状態です。

 

ただし、分配金原資を運用報告書で確認すると、毎月の分配金を当期の収益で賄っていることがわかります。

つまり、配当では足りていないけれど、株価上昇による売買益(評価益)が分配金を十分に賄えるだけ得られているということです。

それにより、分配余力を計算するのに重要な翌月繰越分配対象額が微増(1,266円から1.288円)しています。第221期終了時点の分配余力(毎月20円を分配した場合)は約65ヶ月です。

計算式は「当期分配金÷分配可能原資(翌月繰越分配対象額+当期分配金)」になります。

ただし、他のファンドでは、基準価額よりも翌月繰越分配対象額の方が大きい場合があるので、分配余力は参考程度と考えておく方がいいでしょう。

 

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)と類似ファンドや人気ファンドとの比較

他のファンドと比較する前に、まずは日本株y先進国株などの、資産クラスでの騰落率(2018年9月~2023年8月)を見ておきましょう。

ピクテグローバルの騰落率は、下のグラフからもわかるように、株式の資産クラス(日本株、先進国株、新興国)に比べて最大・最小の騰落率の幅が小さく、価格変動リスクの小さいファンドと言えます。

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出典:投資信託説明書(交付目論見書)2023.11.11|ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

 

類似ファンドとの比較

次に類似ファンドと比較してみます。ここでは、高配当(好配当)キーワードに

  • 世界インフラ関連好配当株式 通貨選択型ファンド(米ドルコース)/三井住友トラストアセットマネジメント
  • 世界高配当株セレクト(目標払出し型)毎月決算・為替ヘッジなしコース/アセットマネジメントOne

の2つと比較します。純資産総額やコスト、運用パフォーマンスを比較したのが下表です。

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出典:ウエルスアドバイザーより筆者作成

 

コストでは、世界インフラが販売手数料3.3%、信託報酬1.80%と最も低く、次がピクテグローバルの販売手数料3.85%、信託報酬1.81%でした。

トータルリターンでは、1年、3年、5年とも世界高配当セレクトが最も高く、ピクテグローバルは5年で2番手ですが、1年、3年とも他のファンドの大きく劣後しています。

価格変動リスクの大きさを見る標準偏差では、直近の1年間を除いてピクテグローバルが他のファンドよりいい成績を収めています。

 

人気ファンドとの比較

次に人気ファンドと比較してみましょう。ここでは、インデックスファンドとして今最も人気がある「eMAXIS Slim」のシリーズから

  • eMAXIS Slim先進国株式
  • eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)

と比較します。

eMAXIS Slimシリーズについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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出典:ウエルスアドバイザーより筆者作成

 

コスト面では、比較した両ファンドともインデックスファンドのため、販売手数料、信託報酬などのコスト面では、ピクテグローバルと比較にならないほど低率です。

トータルリターンでは、1年、3年、5年とも業種や銘柄を絞らないeMAXIS Slimの方がピクテグローバルに比べて高いリターンでした。

この間はアップルやマイクロソフト、テスラなど大手IT企業の時価総額が急激に拡大したので、その差が表れたとも考えられます。

 

 ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)の評判は

ピクテグローバルの口コミ・評判について、Yahooファイナンスやみんかぶでは以下のようなコメントが見られました。

私は現役引退ですが年金の受給開始は3年後を予定してます。よって現在は無収入なので毎月分配型はリスクは有るものの貴重な収益源です
(YAHOOファイナンス 2023/12/13)

ピクテグロインも毎月分配型での純資産額では頑張っていますね。
1位 アライアンスAB-D 20746.90億円 騰落率26.13%
2位 ピクテグロイン  9456.74億円 騰落率3.18%
3位 インベスコ    8841.78億円 騰落率16.31%
でもね 騰落率は3.18%となっていて他のファンドとの開きは大きいです。
(YAHOOファイナンス 2023/10/14)

インフラは高成長産業ではないから低リスク、低リターンのファンドだと思います。 メインは米国。 長期運用して利確してまだ保有しているが、低リスク高リターンのファンドがあると思っているので切り替えを検討中(おそらく乗り換え)。
(みんかぶ 2023/7/18)

資金流出が多い中、さすが流入トップとなるだけの実力があるファンドです。世界のライフライン企業株に投資しているので安心感もあります。
(みんかぶ 2019/4/9)

口コミでは、毎月分配型の中で時価総額を比較するものが多い印象でした。基準価額については2,500円前後で安定して推移しているためか、関心が薄いようです。

Yahooファイナンスなどの掲示板を見た限りでは、保有者はファンドの性格を理解して投資している人が多いのか、あまり悪い評判はありませんでした。

 

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)とメリット・デメリット

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)のメリットは、安定的な分配金が期待できる点と、投資対象が株価の変動が小さい公益株なので、他の株式ファンドに比べて価格変動リスクが低い点になります。

しかし、毎月分配金を支払うため、投資した資産が増えづらい点は大きなデメリットです。

また、公益企業の弱点として、リーマンショック(2008年)やチャイナショック(2015年)、最近の新型コロナショック(2020年)などに世界的に株価が急落した場合の回復力が弱い点もデメリットになります。

分配金の落とし穴

将来に向けた資産形成としての投資・運用を考えている人にとって、分配金という制度は悪でしかありません。

分配金の仕組みをきちんと理解できていない人の中には、

「分配金がもらえる=安定した収入になって良い」と
勘違いしてしまっている人もいるかもしれませんが、そもそも分配金とは、ファンドの純資産の一部を削って支払われています。

つまり、部分的に解約しているような状態であり、決して収入になっているわけでも、利益が増えているわけでもありません。

長期的に資産形成するためには、きちんと資産を積み立てて複利で運用することが何よりも重要です。

分配金を再投資する方法もありますが、税金の面で考えても不利になるだけなので、基本的には分配金制度のある投資信託はおすすめできません。

 

まとめ

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)は、安定した配当(インカム)が期待できる公益企業に投資をすることで、安定した毎月分配を目指した投資信託です。

分配金という見かけの収入が得られる一方で、純資産総額の増加が期待できないファンドになります。

 

その点から、ピクテグローバルの投資に向いている人は、ある程度まとまった資金の投資ができ、現在の収入(年金など)にプラスαして、毎月の収入を得たい人です。

 

逆に、これから資産を増やしていこうと考えている方、長期的な資産形成をしたい方(若い方など)には、おすすめできないファンドと言えます。

自分に合ったものを選ぶためにも、ファンドの特性や仕組みをきちんと理解することは非常に重要です。